CAMOCY 陸前高田の発酵パーク「カモシー」
2020年秋オープン予定 Fermentation Park Rikuzen Takata, Iwate, Japan
CAMOCY 陸前高田の発酵パーク「カモシー」
陸前高田で発酵がはじまります
2020年秋オープン予定 Fermentation Park Rikuzen Takata, Iwate, Japan

about CAMOCY

陸前高田市の今泉地区に、
発酵をテーマにした商業施設ができます。
麹を発酵させて、酒や醤油をつくることを「醸す」といいますが、
醸造においてたいせつなことば「醸す」から
このプロジェクトを「CAMOCY(カモシー)」と名付けました。
味噌、醤油、パンやチョコレートにクラフトビールなど。
発酵なしには作れないものを、たのしく、おいしく提案していきます。
スタートしたばかりの「CAMOCYプロジェクト」。
さまざまな進捗をこのページで少しずつ発表していきます。
どうぞ、おたのしみに。

VOICE

八木澤商店 河野通洋

陸前高田の今泉という場所で「CAMOCYプロジェクト」を始めます。

2011年に起きた東日本大震災によって、街全体の99%がなくなった、ここ陸前高田市を「発酵」を真ん中において、醸していきたいと思います。醸造業のわたしたちがよく使う「醸す」という言葉には、「時間をかけて熟成させ、つくりだす」という意味があります。

震災前八木澤商店の周りは、半径30m以内に数軒の味噌醤油屋が、同業者なんだけれど、うまく共存しているという環境でした。
今泉で作られていた醤油、味噌、酒の原料は、どこで作られていたかというと、大豆も米も麦も、全てこの地域の中で獲れたもの。今泉という地名の由来にもなっている地下水が井戸からこんこんと湧き出ていて、いい水にも恵まれた環境だったものですから、昔から醸造業が発展していました。
日本全国を探せば、そういう場所がいくつか見つかると思うのですが、こんなに小さい町の中に4軒の醤油屋があって、麹屋も含めると味噌屋も4軒あって、酔仙酒造という酒蔵もある。原料は全て地元で作っていて、いい水もあった、という場所でした。

「発酵」をテーマに町おこしをやるのはどうか、というアイディアは、実は震災の年に「今後どのようにまちづくりをしていくか」を話しあっている時に出てきたことなんですが、プロジェクトを始めるまでに、2011年からここまで時間が経ってしまったというのは物理的な問題もありました。街全体のほとんどが津波によってなくなってしまった場所なので、まずは土地全体の嵩上げから始めなければならない。たぶん人口も、震災前の半分以下になっている。それでも震災から8年たった後に、このまちに愛着があって、やっぱりここに住みたいと、陸前高田に帰ってきた人たちは、自分たちが育った環境がたまらなく好きで戻ってきているはずなんです。少しでも戻ってきた人たちが好きだった、その人たちが育った環境の「香り」がするようなまちをもう一度作りたいなと考えたのです。

その昔、陸前高田の小学生がこのまちを表現をする時、「豆を炊いてる匂いがするまち」とか「小麦を炒っている香煎の香りがするまち」という言葉が、必ず出てきました。自分が子供のころもそうでした。必ずどこかの蔵で豆を炊いていたり、小麦を炒っていたり、米を蒸していたりするわけです。その「香り」が町中に漂っている。
この「いい香り」は、原料がα化する時の香り。それとはまた別に、醤油には「火入れ」という工程があって、とんでもなく、いい香りがするんです。搾りたての醤油に火がとおっていく、いい香りが町中に立ち込める。夕食(ゆうげ)の香りというのがありますが、今泉の「いい香り」は、各家庭で夕ご飯を作っているいい香りどころじゃないんです。まちの産業自体が醸造業なので、1日に何トンというレベルで小麦を炒ったり、大豆を炊いたり、火入れをしているから、いい香りだらけになるんです。
小学校のほうまでその香りが流れていって、窓から入ってきた香りをかいだ子供たちがあぁ、お腹すいたな、と思いながら外を眺める。
そんな「香りのするまち」を、またつくっていきたいなと思っています。

この地域の中で、持続可能な生活を営んで行くことを考えた時に、発酵の性質がぴったりくるのです。何千年と続いている発酵は、持続可能な上に、ものすごい多様性を持っています。醤油づくりを例にあげると、麹菌、酵母菌、乳酸菌という微生物がかかわっていますが、それぞれの微生物が違った性格を持っていて、いい働きもすれば、時には悪い働きをすることもある。目に見えない微生物が「醸していく」過程では、二酸化炭素を発生させたり、アルコールを作り出したりというものすごいエネルギーも発しているのです。多様性があり、パワーのある微生物が、同じ空間の中で働くと、結果としてピュアなものや化学物質には作りだせない、旨味や味わいを作りだすことができる。人間はどうしても「こうでなければならない」という、都合に合わせて作ろうとしてしまうことが多いのだけれど、微生物の世界においては「こうでなければならぬ」という法則はなくて、どんな微生物でも、生存競争の中でちゃんと役割をもっている。これから自分たちが暮らしていくこのまちのことを考える時、多様性を持ち、違った個性を認め、一緒になにかを作り出す時、内にとてつもないエネルギーを秘めている「発酵の力」、そして「醸す」というキーワードが、とてもしっくりくるのです。
全体の雰囲気を、いい方向に醸していこう、醸していこうとみんなが思った時、蔵つきの微生物のように、町つきの微生物が働いて、まち全体をいい場に醸し出してくれる。いい場を醸し出していくという意味では、「CAMOCYプロジェクト」は、一番最初の小さな導火線かもしれません。この種火がだんだんと飛び火をして、東北全体が、良い形に醸し出されていって、「復興がいい感じに醸したね」と言える日が来たら、こんなに嬉しいことはありません。
津波というものがあったけれど、放射能というものもあったけれど、そういった自然の大きな変化も、人間が作り出してしまった化学物質の問題も、もっと大きく見ると「微生物の醸し」には敵わなかったんだね、と言える日を頭に描きながら、「CAMOCYプロジェクト」をスタートさせます。